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小説「緩衝バッファ」

「そろそろ車の免許も返納しようかと思う。もう乗っていてもな……。反射神経もだいぶ衰えてきたし」ボソリと父は言う。父も母ももう随分と早く寝る習慣になっているが、それはそうだ、もう八十も近い年齢だ。そんな両親の住む実家に着いたその日、いつの間にか僕は寝ていた。いや、寝ていたのかも曖昧だ。実家に向かった記憶は微かだ。もしかしたら向かってもいなかったのか。だとするとどこかで僕は倒れてしまったのか。繋がらぬ記憶が、顔見知りの隣人の名前を思い出せないくらいにモヤモヤした気分にさせていた。

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