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小説「顔と名前」

人の顔を覚えていること。それは、私が小さな頃からの特技だった。双子の見分けが完璧だったり、一度覚えた親類の顔を忘れなかった。タレントの名前や幼稚園の先生など、とにかく一度見たら忘れない。家族で出かけて街で芸能人を見掛けたとき、誰より先にそれに気付いたりした。髭を生やした人がいて、ある時に髭を剃り落とした事があったが同一人物だとすぐに判ってしまう。しかし私は頭脳明晰というわけではない。人並みの成績しか取れなかった。それほど学習能力が高いわけではないし、努力家でもない。それでも私はなぜか顔だけは忘れなかった。

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